「今というこの瞬間を楽しむ」

大本聖地神苑雪

12月月次祭後に前田先生が講話をされた中で、「取り越し苦労をしない、過ぎ越し苦労をしない、今できることに最善を尽くす」「感謝するクセをつけると不平不満が少なくなる」というフレーズが印象的で、あるエピソードを思い出しました。

昔、訪問入浴の仕事をしていて寝たきりの方など、ご自宅のベッドのそばにお風呂を設置して身体を洗います。ある時、末期の状態で退院された方から、お風呂に入れてほしいと連絡があり、社内でも入浴中に容体が急変した場合に対応できないなど、対応するかどうか協議を重ねましたが、ご家族から「何があっても責任を問いません。本人の強い希望なのです」とのご意向をお聞きして、ご依頼のあったご家庭に伺いました。ご自宅に着くと、中年の女性が、酸素マスクを付けておられました。血中酸素濃度もかなり低下していました。温かい湯につかり身体を洗わせてもらうと、とても嬉しそうな表情で「気持ちいい」「ありがとう」と小さな声で伝えてくれ、手を合わせて涙されていました。苦しい状況でも感謝される敬虔なお姿でした。それから5時間ほど経ってからでしょうか、ご家族から亡くなられた旨の連絡が入り、職場の仲間と落ち込みましたが、「お風呂に入ることができて本人もとても喜んでいました。きれいになって旅立つことができました」と、あたたかい言葉を頂きました。

現在は、障害者の施設で働いています。6年ほど前、好きなアニメがある20代の車椅子の青年が入所されていました。持病を患っており余命も宣告され、具合が悪そうな状態でしたが、好きなアニメをつけるとほふく前進のようにテレビの前に行きます。職場の看護師は、「○○君は、よくあの状況で身体を動かせるね。病気や死の恐怖、絶望とか考えないからだよね」と言っていました。
○○君はその後体調を崩し入院しました。ある日、ご家族から、「危ない状況で、お別れに来られる職員さんはどうぞ来てください。」と連絡が入りました。色紙に好きなアニメを描き、寄せ書きして急いで駆けつけると、苦しそうに呼吸していましたが、目を大きく開き、色紙に手を伸ばすのです。そのパワーに驚きました。棺の中の○○君の表情は明るく、口元がはっきりほほ笑んでいました。

先生が講話の中で、「生まれてくる前に、神さまと自分が相談して魂を成長するために起こりうる出来事を決めている。あきらめたり、絶望したりしなければ、自分に起こる困難な出来事は乗り越えられるようになっている。乗り越えられないような困難は起こらない。それが起こるということは、乗り越えられる力があるからです。」とお話されていました。

様々な身体的、精神的な障害を抱えている利用者さんと向き合って支援のあり方に悩むこともありますが、神さまにお祈りさせていただけるありがたい環境に感謝して、今というこの瞬間を大切にしたいと思います。

静岡分苑 谷田阿井子